3D を担当している佐々木です。今回は「化石と現場の 3D 化」について話題提供します。私たちが暮らす和歌山県には恐竜や海生爬虫類が大繫栄した中生代白亜紀の地層がいくつもあり、実際にスピノサウルスの歯やモササウルスの全身骨格が見つかっています。そこで私たちも化石を探し出して 3D 化してみたいという思いから、現場へ出かけて実践してみました。 3D モデルはスケッチファブにて公開しておりますので、閲覧しつつ読んでいただけると嬉しいです。
最初に 3D 化したのは三角貝の仲間トリゴニアの一種です。この化石は3月13日に湯浅町で開催された和歌山県立自然博物館友の会主催の化石発掘イベントに参加して、当社の地質・化石担当の新垣氏が見つけたものです。ちなみに他の参加者は状態の良いアンモナイトを見つけていて、内心羨ましかったのですが、ここではアンモナイトと同じ白亜紀の海を生きた「トリゴニア」を 3D 化することにしました。3D化にはフォトグラメトリ専用ソフトMetashapeを使い、撮影時は回転台を使って、合計48枚の画像から構築しました。完成したデータにはテクスチャー情報も張り付けられるので、形状だけではなく、質感や色を観察することができます。
トリゴニアデータ
アンモナイトも撮影したい
タイトルの通りアンモナイトを見つけられなかったのが悔しかったので、新たに化石発掘ポイントを探し出し、念願のアンモナイトの仲間のシャスティクリオセラスをゲットしました。化石の状態が素晴らしいとは言えませんが、うずまく形状とアンモナイト特有の刻みを 3D 化することができました。データ構築の方法はトリゴニアと同じです。
アンモナイトのデータ
化石探しがやめられない
当初は 3D データの構築が目的だったのですが、化石の魅力に取りつかれてしまい、ついつい化石の出る堆積岩を探してしまう日々となりました。その過程で白亜紀の示準化石でもある大型の二枚貝イノセラムスの一種が地層から産状する現場に遭遇することができました。写真のように比較的状態の良いイノセラムスをそのまま 3D 化したいという考えから、地層ごとデータ化することにしました。方法はこれまでと同じフォトグラメトリですが、今回は単焦点24mmのレンズを使って手持ちで撮影しました。まず、現場をデータ化するため230枚撮影、イノセラムスの産状だけのデータは64枚撮影しました。ちなみにスケールは手持ちのスマートフォンを使い、現地にノートパソコンを持ち込みその場でデータを構築しました。完成した 3D データを見ると地層の状態やイノセラムスの産状の様子がはっきりと観察できます。発掘後もデータ上で化石や周辺地形を計測でき、不要な岩などは簡単に消すことができます。このデータを使った模型と本物の化石を共に配置したら見応えのある展示になりそうです。