ツキノワグマ Ursus thibetanus の全身骨格を3Dスキャンして、レプリカを完成させました。この記事ではツキノワグマと製作の流れをご紹介します。
ツキノワグマ はヒマラヤから、インドシナ北部、中国、海南島、台湾、朝鮮半島、ロシア沿海地方、日本に分布し、その一亜種であるニホンツキノワグマ Ursus thibetanus japonicus が本州、四国に分布し、九州の個体群は絶滅したと考えられています。成獣の頭胴長は1200~1630mm、体重は55.0~187.5kgです。和名の通り月の輪が胸のところに見られます。
ツキノワグマ の前あしの爪は鋭く、重要な道具であり、武器です。ツキノワグマ の生息する山へ入るとこの鋭い爪によって傷つけられた木を見かけます。
ツキノワグマ の骨の一つ一つを3Dスキャナーを使ってデジタル化しました。データ取得にはコツがいります。特徴の少ない肋骨は難しく、何度も失敗しながらデータを構築しました。なお、回転台を使用すしたり、回転させる方向を工夫することでと失敗を減らすことができます。
この作業をひたすら繰り返し、ZBrushで結合させて完成させました。なお、今回の個体は静岡県のツキノワグマを使用しています。性別はオスで、体重は21.3kgの若い個体です。
完成した3Dモデルを3Dプリンター専用のソフトウェアで処理し、出力する際の大きさを手のひらサイズに変更しました。使用した3Dプリンターは光造形式です。
そして完成させたのが下のレプリカです。今回は座っているポーズにしていますが、歩いている状態にも変更することもできます。すべての骨をばらして完成させているからこそできることです。
ZBrushでは対象以外の部位を透過させることができるため、自然な骨の並びに調整することができます。
出力した直後は不要なレジンが付着しているため、アルコールで除去します。次に扇風機を使ってアルコールを飛ばして乾燥させます。乾燥後は紫外線を照射して二次硬化させます。そして、手作業でサポート材を除去していきます。完成までに1か月程度要する場合もあります。
エアーブラシを使って骨らしい色を再現していきます。標本を参考に着色しているのでリアルな色に仕上がります。
今回は ツキノワグマ を題材に骨格の3Dスキャン、3Dデータの構築、3Dプリンターを使ったレプリカ製作の様子を報告しました。このレプリカに興味を持っていただいた方は、是非ともショップもご覧いただければと思います。